鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

 不思議な夢を見た。

 背の高い書棚の前に連れて行かれ、そこには一人の作家の本だけが集められている。中には同じ作品の装丁違いもあり、つるつるしたベージュのカバーがかかった文庫版と、黒の和紙のようなカバーをかけた新書版を、私の傍に立った本の作者が差し出してくるのだ。どちらがいいと聞かれたのかもしれない。私はパラパラとめくりながら文字を追い、確か新書版を指差してこちらが良いと答えた。

 あざやかな夢だったけれど読んだ本の内容は思い出せない。