鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

回想

 そういえば、5月の終わりに体調を崩したのだった。気温の乱高下が激しく、金曜の朝起きたら喉のひどい痛みと熱が出そうな気配があった。

 私は喘息持ちのため、風邪症状があったらすぐに来るようかかりつけ医に言い含められている。病院に連絡したところ、渡航歴、味や匂いは感じるか、熱はあるかなど根掘り葉掘り聞かれ、PCR検査はやってないので了承してくれと念を押されてから、ようやく診察の許可が下りるという厳戒態勢。結果「この喉の腫れはあからさまに風邪ですね」と診断され、徒歩10分の道のりを歩いていると、だんだん熱が上がってきた。高熱にはならなかったものの、微熱がまる二日続いた。

 一日勤務を休んだだけで週末に突入してくれたのは不幸中の幸いだったのだが、体調不良により欠勤した者は産業医の許可が出るまで出社してはならないというおふれが出ていたことを思い出して、私は青ざめた。折しも6月から週一回の出社日が設けられたところだったのである。まる二ヶ月の在宅勤務で、会社には未処理の紙の書類が溜まっており、週一の出社日はただでさえ有効に使わねばならないのに。

 チームの次長から部長に話が行き、そこから管理本部に飛んで、本部スタッフとのヒアリングののち、産業医と電話面談して可否を決めるなどという大事になった。いつから体調が悪くなり、処方された薬は何と何と何、もう熱はないか、などなど細かく聞かれること二回。割とすんなり許可が降り、今度は部長と次長に「何事もありませんでした、お騒がせして申し訳ございませんでした」とメール連絡し、ようやく事は済んだ。

 東京のコロナ感染者数は高止まり続きだ。私のせいで余計な仕事をまた増やしてしまわないように、今日も手を洗おう。