鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

変わりゆくもの

 図書館に予約本が届いたというので、仕事を終えた私は道を歩いていた。何気なくひゅっと息を吸ったとき、喉の奥を羽根で撫でられるような感覚があり、かはっとむせた。むせたのは一瞬だったので、気道の方には入っていないと思うが、よろしくない感触だった。この時期なので羽虫かと思ったが、私は常日頃からマスクをピッタリと装着しており、そうとは考えにくい。埃だったのか、自分の唾液かはわからないが、嫌な感触だけが残り、慌てて家に帰り丁寧にうがいをした。

 夏にマスクを着けることに慣れた私でも、今年の夏は辛い。とにかくひっきりなしに水を飲んでいるが、身体がエアコンに慣れて汗をかきにくくならないか心配である。

 例年、お盆の時は東京の人口密度は少し減るのだが、今年はそうもいかず、皆が息を潜めてじっとしているのかと思うといたたまれない。子どもの夏休み短縮もかわいそうだけれど、先生たちの休みがもっとなくなりそうなのも。

 蟬だけが元気に鳴いている。何年か前にクマゼミの分布が変わり、東京でも見られるようになったとか。透き通った羽のクマゼミはきれいで儚くて、アルビノなのかと思ったものだった。生きるために住む場所を変えるセミみたいに、人も何かを変えなきゃならんのか。