鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

日が暮れる前に

 住宅街の中に分け入っていくと、不意に強い既視感に襲われることがある。

 今日通りかかった風景は実家近くの場所にめまいがするほど似ていた。本当はこれは既視感とは呼ばない。知っている風景を初めて見た街の中で無意識に探しているのだろう。

 初めて会った人を知己の誰かに似ていると思うのに近い。他人の空似は面白くてインパクトが強いので、人の顔を覚えにくい私には有効な手段だが、要らぬトラブルになることもあるので例えた人も例えられた人にも黙っておく。

 目的地の公園では紅葉が美しかった。紅葉に限らず、大きな木の下で見上げるようにその木を撮るのが好きだ。水底から海面を見上げるような気持ちで枝葉の向こうの空を見る。夜の帳が日に日に速くなる。道に迷うと怖いので、早く帰ろう。