鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

一族共通の悩み

 寒い夜道は眼鏡一族にとって大敵である。自分の息で眼鏡が曇るからだ。マスクをしているとさらに曇りが増し、目の前にいる人(黒っぽい服は特に危険)や電柱にも気がつけなくなる。真正面が死角になるのだ。

 先日眼鏡を買いに行った折、視力検査でコンタクトはと聞かれ、つい「しない主義なんです」と答えてしまった。主義ってなんだ。17の頃から眼鏡生活だが、実際コンタクトを使ったことがない。眼球に異物を触れさせるなんてそんなおぞましいことは私にはできない。

 それでも、こんな寒い冬に外を歩くときだけは、眼鏡に不満を覚える。あまりにも見えないので外して手に持って歩いた。かなり見えていないが、少なくとも人や電柱にぶつからない程度には見える。

 しばらく歩いて、前方に大きな犬が見えたので眼鏡をかけた。グレートピレネーだと思う。大きい犬たちの笑ってるみたいな顔は最高である。猫と犬と美しいもの、自分が望むものだけ見て生きていけたらいいんだけどな。そうもいかないので眼鏡を戻したまま、そっとマスクから鼻だけ出した。人混みでは無理だが、これで曇りは少しだけマシになる。