季節もの
私が小学校5、6年生の頃、節分にどこだかの方角を向いて海苔巻きを一本丸かじりしながら願い事をすると良いらしいと祖母が突然言い出し、突如あたらしい習慣が始まった。あちこち曖昧なのは、たぶんラジオかなにかで仕入れた知識だったせいだろう。
東京に来た年、ちょうどその習慣が関東にまで分布した頃だったようで、バイト先のコンビニの店長が張り切って大量に仕入れ、まだ物珍しかったのも手伝って、見事に売り捌いたのを覚えている。
それにしても、おせちみたいに具材それぞれに意味があったはずなのに、どんどんバリエーションが増えていくものだ。夜勤明けの家人に頼んだら、エビフライ巻を買って帰ってきた。もちろん好きだ。各社のチラシを見ると、具材もりもりすぎて空中分解しそうなものもある。節分に恵方巻き、クリスマスにチキンのごとく、当たり前になったようで何よりだ。
バレンタインも丑の日のうなぎも意図的につくられた行事ではあるけれど、きっかけとして乗っかるぶんには悪いもんじゃない。恵方巻きも節分の豆も、今年も来たなあと楽しく食べる。
にしても、豆でお腹いっぱいになりかけるとは…年取ったもんだ。