鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

ただしくいきる

 在宅勤務の日はオンラインでチームミーティングがある。今流行りのTeamsで、ミーティング用の場所が設定してあって、時間になったらそこに入るのだ。

 私は子どもの頃から、運動会や遠足などの行事の日、いつも不安だった。今日は本当にそれが開催されるのだろうか、自分以外の全員で私を騙していて、リュックを背負って学校へ行ったらお前何やってんの、みたいに言われるのではないだろうかと。

 唯一の拠り所は母親の手弁当で、これを持たされたということは、少なくとも母だけはグルではないのだと信じられた。そしてもし給食があったとしても、私だけはこれを食べるのだ、いや先生が明日は弁当持ってこいって言ってたから、少なくとも給食はないのか…などとぐるぐる思考しながら学校へ行くのだ。

 幸いながら、間違っちゃったことは一度たりともないのに、大人になった今でも不安だ。チーム会、私だけ時間変更を知らされてなかったらどうしようなどと、いつもドキドキしながらTeamsを開き、誰かが入ってきてから自分も入る。

 最近のように在宅勤務と出社が混在していると、自分が間違って出社してきてしまったのではないかと、チームの人が来るまで怯えている。別に間違えたからって死ぬわけではない。けれど、不安すぎて歩くスピードがどんどん落ちていく。そのうち息をひそめてすり足で歩くようになるのではないか。世界も私もどうしてしまったんだろう。