猫(1)
猫は暑いのか苦手なはずだが、今日はやけに行き当たった。白いのと黒いのと、茶白と計3匹。
猫といえば近所の寿司屋で飼われていたのを思い出す。バイクのシートに香箱座りをして、電車が行き過ぎるのを眺めている老猫だった。歳をとって痩せているが、おそらく餌のおかげでだろう、つややかな毛をしていた。
ある日のこと、勝手口から出てきた店主が猫にハムを与え、すぐに仕事に戻っていった。猫は前足で押さえながら食べていたが、途中でハムが滑り落ちてしまった。シートの隙間に入ってしまい、懸命に前足を伸ばすが届かない。見かねた私がハムを拾い上げ、口元に持っていってやったのだが、怒りもせずじっと待っているのである。取られるなどとは微塵も思っていないそぶりだった。【続く】