鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

猫(2)

 寿司屋の猫は代替わりし、当代は警戒心が強いキジトラである。1メートル以上は近づけない。

 代替わりと言えば、隣宅の猫もそうだ。ベランダからこちらの廊下に飛びうつってきては、私に遭遇してダッシュで逃げる臆病な猫だった。顔に黒ぶちがある日本猫で、「ぶち子」と勝手に呼んでいたのだが、仕事が忙しく全く余裕がないうちに見かけなくなってしまった。やがて顔にぶちをつけた縞三毛が同じ家の窓際に現れるようになった。二代目は初代に輪をかけて臆病で、こちらに飛び移ってもこない。窓にかかるカーテンは、彼女(三毛なので彼女だと思う)が通るせいで、体と同じ高さで塗りつぶしたように茶色い毛がついている。人の顔を見ては知らんふりをしたり、寝転がりながらこちらをうかがったりが何年も続いた。

 しばらく見ない日が続き、心配していたところ、茶色い影が窓際にあった。私の鳴き真似に振り返ったその猫はなんと三代目。二代目との血縁を感じさせる毛並みと、子供っぽい顔つきできょとんとこちらを見つめている。数日後、二代目と三代目が仲良く昼寝をしていたので、私の気のせいではない。

 そんな二代目もここのところ見ていない。【続く】