猫(3)【了】
二代目と同じ頃に、窓の下にやってくる大きな猫がいた。こちらはとにかく強面で、近寄んなコノヤローと全身で叫んでいるような日本猫だった。しかし、これがまた可愛い声で鳴くのである。強面はなぜか冬になると姿を消し、夏にまた現れる。冬には双子のような黒猫がブロック塀の上で香箱座りをしている。強面は、よく給湯器の室外機の上で昼寝をしていた。
よくもまあこれだけ見ているものだと我ながら思う。猫はとても好きだが、はじめて飼った猫を思うとどうしても飼う気になれない。
転勤族の叔父が社宅内で猫をもらい、引っ越すことになったのでと実家である我が家へ連れてきた。ロシアンブルーの血を引く彼は手足と腹と顔が白く、私にもよく懐いてくれた。喧嘩の弱い色男で、負けては血塗れになって帰ってきたものだった。だが、ある日出かけていった彼が程なくして、後ろ足を引きずって帰ってきた。いや、下半身が全く動かず、上半身で体を引きずってきたのである。
背骨が、折れていた。獣医の話では、棒か何かで叩かれたのではないかとのことだった。彼は明け方に、一声鳴いて息絶えたという。