鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

静かな夜に

 夜の散歩に出てみると、人の気配があまりにもなくて、ゴーストタウンみたいだった。普段ならまだ生活音が聞こえてくるはずの時間帯、息を潜めているかのように、音がない。

 こんなときに散歩だなんて非常識だ、などと正義を振りかざされたらどうしよう。そっくりあなたにお返ししますって言ったら効くかなあ。なんて考えつつ歩いた。

 世界が閉じて、守りに入ろうとしている。こういうとき、どうやって攻めたらいいんだろう。しかも、声を出しても、笑ってもいけない縛り付きで。

 暗闇の中、かさこそ音がしたかと思うと、萎びた実の残る柿の木を長い尾の生き物が駆け上がっていった。ハクビシンだ。闇の中、屋根に移ったのが音で分かる。人が少ないから暗躍しているのかな。捕まるなよ、上手く立ち回れよ。