鼻から吸って口からこぼす

おや、いらっしゃい。なにかお探しで? その我楽多ね、画面に不定期になにか出てくるんですよ。ぷろぐらむとかいうやつですかね。なんの役にも立ちやしないのに。物好きですねぇアナタ。はあ、左様ですか。なんですかねえ、決められたことだけしていれば楽に生きていけるのにねえ。そう思いません? あらそう。アナタみたいな人を物好きって言うんですよ。つける薬もありゃしねぇや。

夢の亡骸

 今日はオンラインのワークショップに参加した。講座内容は時間内に脚本を書いてそれを読み合わせるというもので、一人で朗読をすることはたまにあるが、人との掛け合いで脚本を読むのはとても久しぶりだった。

 本を乱読することを書淫というらしいが、脚本などを声に出して読んでいると、もっともっとという衝動に突き動かされる。自分の出番が終わると恥ずかしくて穴に入りたくなるというのに、一番最初に声を出すその直前まで動悸で息もできずにいるくせに、さあ自分の出番だと口を開くと、面白いように言葉が飛び出す。絵具を混ぜるみたいに感情をぐるぐると混ぜて、自分という道具を操って、自分ではないものになりきる。

 出番が終わり、その衝動が消え失せたあと、とてもはしたないことをしたような気持ちになる。それがいたたまれなかったのが、私が一度は志した芝居から離れた理由の一つである。また当時はあまりにもやろう、やろうとしすぎていて、辞めて数年経ってから、現役時代にできなかったことができるようになっている自分に驚いた。悔やんだけれど、それは離れてみて、はじめて手に入れることができるものだったのかもしれない。

 一緒に同じ夢を見ていた同期も散り散りになり、一人か二人が現役で活躍しているのを伝え聞く。私は芝居はともかく歌えないし踊れないし人前に立つのももうイヤなので、仕事にしなくてよかったと心から思う。けれど、遊びでならいつだって演じたい。YouTubeやろうかな。著作権が面倒なことを最近思い知っているけれど。