歳はとりたくないけれど
体力がなくなってくるとか疲れやすいとか、歳をとっていくのが日々いやだなと思うのだけれど、ある意味で歳をとったことが思いがけず良い方向に働いた例を思い出した。
祖父の姉にあたる人がいて、実家で一緒に暮らしていたのだが、その人が脳梗塞を起こした。駆けつけると、ひとまず一命は取り留めたけれども、その夜が峠だという。付き添っていた母と病院近くのコンビニへ行き、食事を買って病室へ戻り、寝ている病人の枕元で食べていると、かすかな反応がある。食べることが何よりも好きな人だったので、匂いにつられたんだろうと二人でちょっと笑った。
結果、その人(以下大おばとする)は助かった。直接医師に聞いたわけではなく、母からの又聞きなので正確ではないのだが、アルツハイマーを患い脳が萎縮していたおかげで、出血により脳が膨らんでもなんとか頭蓋の中におさまってくれたため助かったんだとか。
そのときは災い転じて福となすってこういうことかと思った。しかし大おばはその後障害が残り、うまく食物を嚥下できなくなって、胃ろうの手術をしたので、食べる楽しみを失ってしまった。胃ろうになるとそう長くないと聞かされていたが、手術をしてから十数年生きたのでかなり持ったほうだと思う。
その人生が良かったのか悪かったのかわからないけれど、最悪ではなかったと思いたい。彼女の死顔はとても安らかなものだったので。